コロナ禍の中、今の生活者が求めているものは、価格以上の価値を感じる「コストパフォーマンス」の高い商品やサービスだ。

みなさんこんにちは、生活者と小売の未来研究会の和田康彦です。


◆収入減少で、節約志向がますます強まっている。

2020年の毎月勤労統計調査(確報値、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は1.2%の減少となり、消費税が8%に引き上げられた2014年(2.8%減)以来の大きな減収率になりました。

要因は、新型コロナウイルス感染拡大による賃金減が大きいのですが、具体的には残業代と賞与の減少が大きく関係しています。

詳細を見ていくと、新型コロナウイルス感染拡大による時短営業とテレワークの推進による働き方改革で、残業代にあたる「所定外給与」が12.1%減少し、賞与など「特別に支払われた給与」も3.6%減少していることがわかります。

いずれも比較可能な13年以降では最大の減少率といいますから、自然と節約志向が強まっていくのも納得できます。

一方、日本経済新聞社の調べでも、アベノミクス以降日本の企業(比較可能な上場2049社)の平均年収は上昇していましたが、21年3月期は632万円で2%減少に転じたそうです。

また、経済協力開発機構(OECD)によると、日本の平均賃金は約3万8500ドル(約420万円)でOECD平均より2割も低いという調査結果も出ています。

いずれの数字を見ても、生活者の懐事情はコロナ禍の中で厳しさを増していることがわかります。


◆コロナ禍の中で顧客に支持を集める「業務スーパー」

経済産業省の商業動態統計によると、スーパーマーケットの月次販売額は今年の2月以降前年比マイナスが続いており、日本経済新聞社の調べでは、2020年のコンビニ大手3社の合計売上は10兆3591億円で前年比5.8%の減収に転じています。

このような状況の中でも、例えば、業務スーパーを展開する神戸物産は、2021年10月期の売上高が前年比5%増の3580億円、純利益が前年比33%増の200億円と過去最高益になるという修正計画を発表しています。

業務スーパーといえば、このところテレビの情報番組でも取り上げられて知名度も急上昇していますが、強みは何といっても「低価格」と業務スーパーでしか扱っていない「PB商品」の品ぞろえの豊富さです。

特に、コロナ禍で外出できない中、調理の手間が省ける「冷凍食品」の品ぞろえが豊富で、しかもコスパが高いという評判が広がり、2021年4月末現在、全国47都道府県に922店舗を展開するまでに成長しています。

実は、我が家でも昨年の10月くらいから、近くの業務スーパーで1週間分のまとめ買いをしているのですが、特に肉類や冷凍食品のコスパの高さには驚いています。そして家計の中に占める食費の割合も想像以上に下がりました。


【今日の小売マーケティングの視点】

新型コロナウイルス感染拡大によって、生活者の意識や価値観は大きく変化し、その結果人々のライフスタイルにも大きな影響を及ぼしています。

特に、収入減少による節約志向の更なる高まりによって、生活者の選択眼がより一層厳しくなるとともに、「より安くて品質の良いものを選びたいというコスパ志向」がパワーアップしていくことが予測されます。

一方で、家電製品のような長く使うものに対してはこれまで以上に「こだわりの強いものを選ぶ」志向が高まっています。

アマゾンや楽天などのECプラットフォームを利用する生活者もコロナ禍で一気に広がり、人々の購買スタイルはリアル店舗とECを組み合わせて賢く調達する「ハイブリッド型」にどんどん移行しています。

いずれにせよ、今の生活者が求めているものは、価格以上の価値を感じる「コストパフォーマンス」の高い商品やサービスです。

激変する時代の中、人々の日々の暮らしの質を向上させる商品やサービスを適正な価格で提供できているかを今一度確認しましょう。

生活者と小売の未来研究会〈Lifevaluelab.〉

小売業は、生活者の心と暮らしを豊かにする「幸せ創造業」です。未来の予測が難しいニューノーマル時代こそ、揺れ動く生活者の気持ちにしっかり寄り添い、自社の専門DNAを軸にして「顧客が求める価値」を提供していくことが生き残りの鍵を握っています。さぁ、私たちと一緒に、生活者も小売業も共に成長し幸せになる未来を研究・創造していきましょう。

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